​◆トピック
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​◆スプルース,松について

 表面板によく用いられるスプルースは,日本ではマツと呼ばれますが,これは庭木や街路樹によく使われるあのマツではありません。植物学的には同じマツ科に属しますが,トウヒ(唐檜)という木で,日本では北海道の一部と本州中部の高山地帯にのみ生育しています。トウヒは世界最大の巨木の一つで,カナダやアラスカでは樹高90m以上になるものもあり,いわゆる日本のマツとは異なります。

 

 ではなぜそのスプルースが,ドイツマツと訳されるのでしょうか?スプルース(正しくはマツ科/トウヒ属)は元々北米原産ですが,その亜種がヨーロッパにあり,それがオウシュウトウヒと呼ばれます。このオウシュウトウヒは,モミの木と区別が困難で,クリスマスツリーにもよく使われ,木目も真っ直ぐ,軽くて加工性がよく,乾燥による収縮も小さく狂いも少ないために,スプルースの代替材として用いられ,ヨーロッパでは最も主要な樹木となっています。そのためスプルースよりも材料として広く流通し,このオウシュウトウヒがスプルースと呼ばれるようになりました。つまり亜種が本家より有名になり,本家を凌駕してしまったと言うことです。日本でも植物学的には,オウシュウトウヒという名称が使われますが,一般的な流通名としてはドイツマツ,ドイツトウヒ,ヨーロッパトウヒなどが使われます。

 

 なぜドイツかは諸説ありますが,オウシュウトウヒが一旦ドイツに集積され,そこから出荷されたために,ドイツという名が使われたと考えられます。つまりドイツマツは「ドイツ産のマツ」ではなく,正しくは「ドイツから出荷された,マツ科のスプルースの亜種であるオウシュウトウヒ」ということになります。

 

 現在,日本でギターに使われる材料としては,北米産の本来のスプルースと,ヨーロッパ産のオウシュウトウヒが,多くの場合は区別なくスプルースまたはドイツマツという名称で使われます。区別する場合には,前者をシトカスプルースまたはベイトウヒ(米唐檜)と呼ぶ場合もあります。

​スプルース(カナダ)
​スプルース材
オウシュウトウヒ(北ヨーロッパ)
​オウシュウトウヒ材